IFOAM有機世界大会・IFOAM総会・参加報告書
場所:韓国の京畿道(キョンギドウ)、南楊州(ナンミャンジュ)、八堂(パルダン)
日時:2011年9月28日(水)~10月1日(土)
第17回「IFOAMオーガニック世界大会(OWC)2011」
10月3日(月)~5日(水)第20回「IFOAM総会」
大会のスローガン:「有機農業は生命だ!(Organic is Life)
◆オーガニック世界大会
世界各国から有機運動・有機産業に関わる人たちが集まり、
講演会、ワークショップ、パーティーなどが開かれた。
私が参加した中で印象的だったのは以下の通り。
<金子美里氏>
・金子美里氏 消費者と生産者の提携の概念を世界に知らしめた有機農家として有名な埼玉県の霜里農場が講演。日本語のスピーチで、英語・韓国語の通訳が入っての講演となったが、代替的流通の方法として「提携」に興味を示す海外の参加者も多かった。
金子氏が日本全国に提携による有機農産物販売を広めることができたのは、惜しみない「技術提供」と、消費者による「買い支え」がキーワードだった。また、地域内で直売所を作る、加工食品業者への卸、レストランへの卸など、加工・販売まで関わったことも成功のカギのようだ。
また、原発の水素爆発にも触れ、福島の農家の苦悩と、有機農業と原発は両立しないことを強調した。
<中国 Wen Tiejun氏>
中国において、貧困層にある地方の農家が有機農業によってどう変わるかという興味深い講演。また、講演中、北朝鮮への食糧支援の必要性を人道的観点から主張したことも印象深かった。
<IOIA(独立有機検査員協会)によるワークショップ>
オーガニックに関わる検査についてのワークショップが開かれた。IOIAは私がカナダで有機検査員としての訓練を受けた機関でもあり、知識のアップデートのため参加した。
インドでのグループ認証の実態、韓国の有機食品の状況、日本の有機食品の状況などが発表され、フロアーからの質問でもかなり盛り上がったワークショップとなった。
以下、主な点についてまとめた。
●グループ認証(認定)について
インド、フィリピンなどでは、一つの農場に100人以上のいわゆる小作人が有機栽培に関わっているケースが多くある。小作人一人ひとりが有機認定をとるのはコストの点から考えてもほぼ不可能なため、グループ認証と言われる方式がとられている。100人まとめて認定をとるシステムで、これをまとめるのがICSマネージャーと呼ばれる内部システム管理者である。内部システム管理者は、栽培記録をはじめとする様々な書式の管理をし、認定検査時には窓口となるキーパーソンである。インドの例について発表があった。
グループ認証におけるキーポイントは、良いICSマネージャー(内部システム管理者)を育てることである。現在のところICSマネージャーの教育は登録認定機関の仕事で、講習会は公開で行われる。これは、認定機関はコンサルをすることが固く禁じられているためで、講習会を受けるICSマネージャーもコンサルと講習会ははっきり目的も方法も区別しなければならない。現在のところは、このICSマネージャーの教育が行き届かないために認定が困難なケースがたくさんある。これに対して、「IOIAでもICSマネージャー講習をやったら?」という私の質問に「それは良いかもしれない」とのこと。ICSマネージャーの仕事と検査員の仕事の内容は、内部監査か外部監査かという違いがあるだけで、重なる部分が大きい。一つの認定機関にまかせるだけでなく、独立検査員のように独立ICSマネージャーを育てることには大きなポテンシャルがあるのではと感じる。
日本のJASをグループ認定でとる場合、小作人が100人いたら、検査員は100人分全ての農場をまわることが義務付けられている。ヨーロッパの認証機関はサンプリングと言って、100人のうちの数パーセントだけをまわるだけでOKとするところも多い。今後インドやフィリピンなどでのJASグループ認定をとりたいというケースが増えた場合、やはりサンプリングでも可とする必要性が出てくるのかもしれない。消費者の観点から考えれば、小作人には全員インタビューを実施すべきだし、全ての畑を見てくるべきだと思う。しかし、生産者の観点から考えると、これは非常に時間とコストがかかる方法なので、負担が大きすぎるように思う。検査員にとっては、仕事なので仕方ないけれども、100すべての畑をまわり、100人全てに聴きとり調査をするという仕事は途方もなく大変である。
●韓国の有機農業・日本の有機農業
韓国においては、現在有機農家が占める割合はわずか0.2%にもかかわらず、74の認定機関が存在するとのこと。日本は、0.2%の有機農家に対して60の国内認定機関だから、似たような状況と言ってよい。日本においても韓国においても、生き残れる認定機関はこれから決まって行く。有機産業で食べて行くのは、両国において、まだ非常に困難である。いかに有機産業を育てるか・・・それは、私自身の存在をかけて考えていきたい課題である。
韓国においては、検査員の講習会は全てIOIAが担当するように国の法律で決まっている。日本では登録認定機関が講習会をする。登録認定機関によって講習会のレベルがまちまちで、そのために、検査員の実力もまちまち・・・という問題を抱えているため、韓国のように全員IOIAの講習会を受けることが必須というのは、望ましい解決方法のように思う。
IOIAの日本支部はJOIAであるが、韓国にもKOIAが存在する。KOIAもJOIA同様、資金面での困難に立ち向かいながらも有機農業推進のために尽力している。ワークショップ参加者の中に中国での検査員講習に関わる人がおり、質問の際にぜひ、中国版IOIA(CHOIA?)を作りたいという話があった。中国においても検査員の要請は有機農業の発展のために欠かせない課題となるだろう。IOIAの中国版、ぜひ、期待したい。
●検査報告書について
私にとっての有機食品検査に関わる上で一番の悩みの種である「よい検査報告書とはどのようなものか」と質問させてもらった。IOIA担当者から今後、よい検査員報告書についてのワークショップを開きたいなどの反応があった。IOIAの訓練を受けた者通しは初対面でも、すぐに打ち解けられる。
ワークショップが終わるころには、すっかり仲良くなった参加者もおり、今後の展開が楽しみである。
<会議全体について>
今回のIFOAM世界大会はアジアで開かれた初の会議です。口蹄疫の発生、パルダン地域の有機農業開拓者との意見の相違などで、韓国の主催者は二転三転と会場や組織を変えることになったようで、正直、参加者としては戸惑うことの多かった会議。こっそりと、「今まで参加した国際会議のなかで、もっとも混乱してたと思う」と言っていた人も多かったです。私も、当日にならないとわからないシャトルバスの運行などにずいぶんやきもきしました。ソウルからタクシーで50分もある会場は不便きわまりなく、それでも、このパルダン地域という有機農業開拓の地で会議をやることに意味があったのだよな・・・と思わざるを得ませんでした。IFOAM総会がは、有機農業ミュージアムというこれもまた、タクシー運転手さんも迷ってしまう不便な場所で行われました。ミュージーアムはかなり立派で参加者も楽しんでいました。参加者同士の交流の場ともなり、よいミュージーアムでしたが、正直、この会議が終わったら見に来てくれる人はいるのだろうか、つぶれてしまうのではないか、つぶしてしまうにしてはあまりにお金をかけて作りすぎているのではないか、などと余計な心配をしてしまいました。
環境への負荷ができるだけ少ない大会にしようということは心がけられていたようで、会議用資料セットには、陶器のマグカップが入っていて飲み物はマイカップ持参を推奨していたり、発表者のレジュメは前もって作られたDVDで配布されペーパーレスなど、工夫されていました。
私にとってはコーデックス表示部会有機作業部会で10年来の旧知の仲であるIFOAM関係者に数多く再会でき、非常に興味深い情報交換が出来た。私の国際会議カムバック(出産後初めての約6年ぶりの国際会議参加でした)を喜んでくれる人たちがたくさんいて、本当にうれしくもありました。
今回は夫と息子も韓国に連れていき、会場へも一緒に行ったので、息子と遊んでくれる人たちもたくさんいて、息子にとっては、大変貴重な国際交流のチャンスとなりました。おかげで、韓国語をたくさん覚えたようです。英語を勉強するとなぜよいのかもわかったようでした。
IFOAMジャパンの方々とも短い時間ではありましたが、さまざまお話をすることができ、今後も交流を深めていきたいと感じました。
今後、これを生かして活動していきたいと思います。